人事労務チェックリスト~IPO準備で必須の労務管理のポイントを解説~

労務問題はしばしばIPO準備においてノックアウトファクターとなりがちなであるため、社労士に労務DDを依頼して課題を改善することが望ましいです。

しかし、内部管理体制が全く整備できていていない状況で労務DDを実施しても「出来ていないこと」を指摘されるだけで効果的かつ効率的な労務DDとならないこともあります。

また、IPO準備企業は資金的に余裕がないことも多く、労務DDやその後の改善コンサルをお願いする資金(一般的には100万~200万くらいかかると思います)を出せないこともあるかと思います。

そこで、まずは下記のような人事労務チェックリストで会社の実態を把握し、可能な限りで法令等を調べておくと良いでしょう。

人事労務チェックリスト

項目NO確認事項
就業
規則
1雇用形態毎の就業規則は作成されているか
就業
規則
2就業規則は労基署へ届出て、かつ従業員に周知されているか
就業
規則
3労働者の過半数代表者の選出方法
労働
契約
4労働者の雇入時に、労働条件を書面で明示しているか(非正規社員も含む)
労働
契約
536協定は締結・届出されているか
労働
契約
6法定控除以外の賃金控除を行なう場合、賃金控除協定は締結されているか
労働
契約
7その他必要な労使協定を締結しているか
法定
帳簿
8労働者名簿を作成しているか
法定
帳簿
9賃金台帳を作成しているか
法定
帳簿
10労働者名簿・賃金台帳・出勤簿は3年間保存しているか
労働
時間
11裁量労働制対象者や管理職も含め、労働者の労働日毎の始業・終業時刻を
管理し客観的に記録しているか
労働
時間
12労働時間は、原則として、1日8時間、週40時間以内に収まっているか
労働
時間
131日の勤務時間終了後、翌日の出社までの間に、
一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保するように努めているか(努力義務)
※インターバルを何時間とするかは企業の判断に委ねることとされているが、
できるだけ長い方が望ましい
労働
時間
14管理監督者の範囲は適切か
労働
時間
15変形労働制、裁量労働制等を採用している場合、就業規則や労使協定への記載、
労基署への届出(届出が必要な場合に限る)は行なわれているか
労働
時間
16高度プロフェッショナル制度の適用対象者はいるか。いる場合、下記要件を充足しているか
・年収が1,075万円超の高度専門職であること
・労使委員会の5分の4の賛成かつ本人の同意があること
※高度専門職とは、時間と成果が比例しない業務(以下具体例)
金融商品の開発業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務等
労働
時間
17時間外、休日、深夜労働は月にどれくらい行なわれているか、過重労働となっていないか
労働
時間
18時間外労働の上限は、休日労働を含み、以下①~③全ての範囲に収まっているか
① 単月100時間以内
② 45時間超の複数月(2~6ヶ月間)で平均80時間以内
③ 年間720時間以内
休憩19休憩は、法定どおりの時間(6時間超の場合は45分以上、8時間超の場合は1時間以上)、
労働時間の途中に付与されているか
休日20原則週1日の休日は確保されているか
休暇
休業
21有給休暇は、非正規社員を含め、法定どおりに付与しているか
休暇
休業
22有給休暇が年10日以上ある労働者について、うち5日を取得させているか
休暇
休業
23産前産後休業、育児介護休業等、法定の休業は付与されているか
賃金24最低賃金を下回っていないか
賃金25正社員と非正規社員(契約社員、パート社員、派遣社員等)の間の待遇について、
不合理な差別をしていないか

【参考】必要な待遇の例(ガイドライン一部抜粋)
基本給について、業績・勤続年数に応じて賃金を決める場合、
正社員と非正規社員とでそれらが同一であれば、同一の支給を求める

通勤手当は正社員・非正規社員間で同一の支給を求める

賞与について、会社業績等への貢献に応じて支給する場合、
正規社員と非正規社員とで会社業績への貢献度が同一ならば、同一の支給を求める
賃金26時間外、休日、深夜手当を支払っているか
賃金27月60時間超の時間外労働に対し割増率50%以上の割増賃金を支払っているか
賃金28固定残業代制度を採用しているか
賃金29固定残業制度を採用している場合、就業規則等に規定しているか
賃金30固定残業代制度を採用している場合、実時間を超えたら超えた分を支払っているか
賃金31割増賃金の計算単価は、法定を下回っていないか
賃金32管理職に深夜手当を支払っているか
退職
解雇
33法定の定年年齢を上回っているか
退職
解雇
34以下いずれかの高年齢者雇用確保措置が採られているか
①少なくとも65歳までの定年の引き上げ
②定年を65歳未満とする場合には、少なくとも65歳までの継続雇用措置の設置
③定年の定めの廃止
労働社会保険35労働保険・社会保険の加入義務が遵守されているか
安全衛生36衛生管理者は選任されているか
安全衛生37衛生委員会は開催されているか
安全衛生38産業医はいるか
安全衛生39雇入事健康診断を行っているか
安全衛生40定期健康診断を行っているか
安全衛生41定期健康診断の実施状況を労基署に届け出ているか
安全衛生42ストレスチェックは実施されているか
外国人雇用43在留カード(在留資格)を確認したか(不法就労となっていないか)
未成年44未成年(18歳未満)を深夜又は休日に勤務させていないか
ハラスメント45セクシャルハラスメント、パワーハラスメント等、ハラスメントは行われていないか
労災46労働災害が発生したことはあるか、ある場合にはその内容
労基署対応47労基署の立ち入りを受けたことがある場合、勧告内容と是正状況

上記チェックリスト以外にも業務委託や派遣、出向契約等がある場合は、偽装請負や二重派遣といった論点もありますので別途整理が必要となります。

参考書籍/サイト

なお、IPOにおける人事労務を整理する際、M&Aで行われる労務DDの書籍も参考になります。
IPO関連書籍おすすめ3選-法務・労務管理編-

他には無料で閲覧できる労政時報や労務問題.comというサイトもお勧めです。

人事労務に役立つ情報提供・課題解決支援サイト|WEB労政時報
人事労務に関するあらゆる情報を網羅、多様化する人事業務の課題解決を支援します。1930年から90年超にわたり、人事労務に携わる担当者の課題に向き合い、解決に向けた情報を発信し続けています。
トップページ

定期購読物としては労働新聞等が無難ですね。

労働新聞|労働新聞社
労働新聞―創刊65年超の実績を誇る人事・賃金・労務の総合情報紙です。労働行政労使の最新ニュースを迅速に報道します。