証券取引等監視委員会(以下「SESC」という。)は、令和4年8月31日に開示検査事例集(令和3事務年度)を公表しました。PDF
「開示検査事例集(令和3事務年度)」の公表について:証券取引等監視委員会 (fsa.go.jp)
「開示検査事例集」は、適正な情報開示に向けた市場関係者の自主的な取組みを促す観点から、証券取引等監視委員会による開示検査の最近の取組みや開示検査によって判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を取りまとめたもので、毎年公表されています。
「開示検査事例集(令和3事務年度)」では、昨事務年度版に、令和3年7月から本年6月までの間に開示検査を終了し、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った事例等を追加されており、代表者等が関与した売上の過大計上、海外売上及びソフトウェア仮勘定の架空計上、関連当事者取引に係る注記の不記載等、近年の開示規制違反に見られるさまざまな事例を積極的に紹介されています。また、「監視委コラム」では、最近の開示検査を通じてクローズアップされた開示制度や会計基準のほか、内部統制等について解説されています。
会計開示関連の不適切事例というと日本公認会計士協会や公認会計士・監査審査会を想像する方が多いと思いますが、SESCも解説しているのでご確認ください。
また、本件について週刊経営財務でも解説されていましたが、内部統制の重要性について次の通り触れられていました。他にも事例の詳細を証券取引等監視委員会の方が解説しているので一読するとよいでしょう。
【内部統制やガバナンス体制の重要性】
近時の開示検査の結果、開示書類の投資者の投資判断に影響を与えるような重要な虚偽記載等が認められた事例では、経営陣のコンプライアンス意識の欠如や内部統制・内部管理体制の機能不全など、以下のような背景・原因が認められています。・経営トップ主導のコンプライアンスを無視した業績至上主義の企業風土がまん延していたこと
週間経営財務3576号
・短期的な業績向上に注力するために個人の成果主義に依拠した経営体制であったこと等を背景として、十分な内部管理体制を構築できなかったこと
・経営陣が、リスク管理体制の脆弱性を認識しながら、その是正のための取組みを行ってこなかったこと
・担当者が行った業務を組織的にチェックする体制が欠如していたこと
・経理部門に会計処理の詳しい知見を有する者がいない中、経営幹部の会計基準等への理解不足により不適切な会計処理に至ったこと
・監査役及び内部監査室において不正リスクへの意識が希薄であったこと
・内部監査担当者が他部門と兼任していたり、内部監査規程が明確に規定されていないなど、内部統制、内部監査が機能不全であったこと
・取締役会等に出席しているものの、適切な指摘や質問を行っていないなど、監査役や社外監査役が機能不全だったこと
・会計監査人に会計処理の基礎となる十分な情報伝達がされていなかったこと
これらのことから、開示規制違反の再発防止・未然防止には、上場会社における適正な情報開示を行うための体制整備が必要であると考えられます。
また、これらの公表物や基準のリンクを下記で整理しておりますので是非ご覧ください。