超過収益力や経営権等を反映した価額で取得した子会社株式等の減損処理

子会社株式の取得価額は超過収益力や経営検討を反映した価額となっていることが通常です。また、当該子会社は非上場会社であることから、「時価を把握することが極めて困難と認められる株式」であることも多いです。

当該株式を評価する場合は次の4点について用語を正しく理解する必要があります。
①実質価額の定義(算定方法)とは?
②実質価額の著しい悪化とは?
③財政状態とは?
④財政状態の著しい悪化とは?

特に、実質価額は「当該子会社の超過収益力や経営権等を反映した価額」とすることが適切である場合がある点には留意が必要です。会計士試験や簿記検定では基本的に実質価額は「1株当たり純資産に基づく実質価額」を前提としているため、知らない方も多いかもしれません。

このことは、実は金融商品実務指針第92項に記載されています。

時価を把握することが極めて困難と認められる株式は取得原価をもって貸借対照表価額とするとされている(金融商品会計基準第19項(2))が、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)しなければならない(金融商品会計基準第21項)。


財政状態とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額をいい、財政状態の悪化とは、この1株当たりの純資産額が、当該株式を取得したときのそれと比較して相当程度下回っている場合をいう。なお、この際に基礎とする財務諸表は、決算日までに入手し得る直近のものを使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味する。

通常は、この1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額が当該株式の実質価額であるが、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もある。

金融商品実務指針第92項

この超過収益力や経営権等を反映した取得価額の子会社株式は、その後の業績や業績予測によっては実質価額の定義(何を実質価額とするか)が変わってきますが、それは「金融商品QA33」が参考になります。

たとえ発行会社の財政状態の悪化がないとしても、将来の期間にわたってその状態が続くと予想され、超過収益力が見込めなくなった場合には、実質価額が取得原価の50%程度を下回っている限り、減損処理をしなければなりません。

金融商品QA33

これは、次のように解釈できます。

①株式取得後に発行会社の財政状態の悪化がないとしても、
②発行会社の株式取得後の業績又は業績予測が株式取得時の業績予測を下回っているなど、
③超過収益力等の減少が認められるときは、
④実質価額が著しく低下している可能性がある場合は、

超過収益力等の減少度合いに応じて、実質価額を次のように整理することも考えられます。
A:時価純資産価額
B:第三者による鑑定価額又は一般に認められた株価算定方式による企業価値評価額

この実質価額が著しく低下した場合は、原則として減損処理が必要になりますが、金融商品実務指針第285項には、実質価額が著しく低下したとしても、実行可能で合理的な事業計画等を入手して、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として回復可能性を判定できる旨の記載があります。

ここで、企業価値評価額は、一般的に将来の業績予測を反映して算定されるものであるため、算定された価額からさらに回復可能性を検討する余地はないと考えられます。

なお、金融商品実務指針第92項では、「時価を把握することが極めて困難と認められる株式の実質価額が「著しく低下したとき」とは、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合をいう。」とされています。

減損処理の要否を検討するにあたっては、実質価額の算定及び著しく実質価額が著しく低下したかどうかについて、実質を重視した慎重な判断を要することに留意が必要です。

おさらいですが、下記4点の用語をきちんと整理して評価をしましょう。
①実質価額の定義(算定方法)とは?
②実質価額の著しい悪化とは?
③財政状態とは?
④財政状態の著しい悪化とは?

会計基準等については会計監査六法(Web版)で整理しました。
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