※関連記事:https://cpa-base.com/未収入金と未収収益の違い/を先にご覧ください。
また、※会計基準等について会計監査六法(Web版)で取り纏めているので合わせてご覧ください。
未払金と未払費用の違いとは?
理論的な結論は、未収入金と未収収益と同様で、未払金は確定債務であるため金銭債務に該当するが、未払費用は未確定債務であるため金銭債務に該当せず、継続的役務提供にかかる経過勘定であるという点で違います。
しかし、一つ厄介な基準があります。日本公認会計士協会(リサーチ・センター審理情報)が公表した「未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について」です。こちらは、https://cpa-base.com/賞与引当金と未払費用および未払金について/で整理しました。
このうち、次の記載が未払費用と未払金の混同の原因となっています。
財務諸表の作成時において従業員への賞与支給額が確定しており、当該支給額が支給対象期間に対応して算定されている場合には、当期に帰属する額を「未払費用」として計上する。
未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について
この「賞与支給額が確定」という表現があるゆえに、未払費用も確定債務=金銭債務なのではと考えてしまいますよね。ただ、理論的には未払費用は金銭債務ではないとするのが正解で、そこが未払費用と未払金と相違点になるはずです。
こういう基準があったときは超法規的措置のようなものとして考えるしかないですね。当時の基準担当者が解説してくれない限り・・。
前受収益と前受金の違いとは?
似たようなものに前受金と前受収益があります。まず、前受収益について
前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。
企業会計原則注解五
これに従えば、不動産賃貸業を営む会社の「不動産賃貸サービス」に係る前受金は「前受収益」にするべきですよね。何故ならば、賃貸サービスという契約に従い、継続して役務提供を行うものですから。
しかし財務諸表等規則では次のように規定されています。
不動産業、倉庫業、映画業その他役務の給付を営業目的とするものの営業収益(例えば、不動産賃貸料、倉庫保管料、映画配給料等)の前受額は、規則第47条第3号の前受金に属するものとする。
財務諸表等規則ガイドライン47-3
これに従うと、上記の不動産会社の前受金は「前受金」として処理しなければなりません。つまり、企業会計原則と財務諸表等規則で取り扱いに齟齬が生じています。この場合、企業会計原則という理論よりも財務諸表等規則という細則のほうが優先されるため「前受金」にしないといけないとなります。
このように、時に理論・理屈とは異なる処理が要求されることもあるんですね。
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