週刊経営財務3438号で次のような記事がございました。
『IPO(新規上場)においては,直前々期(上場目標年度の2期前)以降は監査法人等による会計監査が必要になる。そのためIPOに向けては,それ以前の段階から監査法人や公認会計士の指導を受けながら準備を進めていくことが一般的だ。
直近3年のIPO会社の監査法人の内訳をみてみると,2019年はTOKYO PROを含む96社中EY新日本が24社,トーマツが21社,あずさが19社,PwCあらたが4社と,大手4法人で68社・約7割を占めていた。2018年は98社中78社(79.6%),2017年は96社中71社(74.0%)であり,大手4法人が毎年7割程度を占める傾向にある。
IPOの監査を巡っては,IPOを目指す会社のうち,特にベンチャー企業が監査法人から「監査を断られてしまった」,「引き受けてもらえない」との声をきくことがある。その一方で,実は引き受け手がないわけではなく,資本政策や社内体制整備のアドバイスといった上場支援を行う証券会社などが大手の監査法人を勧める傾向にあるためで,大手にこだわらず中堅法人に目を向ければ引き受け手はあるとの見方もある。(週刊経営財務3438号より)
金融庁は12月13日,「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」を設置した。こうしたIPOに係る監査事務所の選任等に関する問題につき,関係者で連絡協議を行うものとしている。』
これについて、大手監査法人に勤める者として見解を述べると、そもそも大手監査法人側でも優良なベンチャー企業については監査を引き受けております。また近年、働き方改革により勤務時間が減り、給与水準もそこまで高くない、さらには滅多矢鱈に感謝される仕事ではないので遣り甲斐もないなどで、人材不足に陥っていることから、物理的な限界も要因の一つとなっているように思います。
IPOに向けた監査はボリュームもあって人手を要することから中堅監査法人での受け皿もあるのかという疑問はありますが、金融庁が設置した連絡会で建設的な話がなされて、より良い仕組みに変わっていくといいですね。
個人的には四半期レビュー制度を廃止するのが効果的な気もします。
監査法人に勤務したことがないと分からないかもしれませんが、四半期レビューの水準は質問と分析的手続が中心で、証憑・資料チェックなどは細かくはやりません。そうであれば、監査法人がやる意義というのも高くないですし、機関投資家やアナリストが厳しい質問をしてくれれば、よいのでは?と思ってしまうこともあります。
一方で、確かにディスクロージャー制度や国際的な信用度を高めて、グローバルオファリングや海外機関投資家の誘致をするという意味では、水準はどうあれ監査法人のお墨付きがあるほうが良いという考えもあるので、難しいですけどね。皆さんはどう思われますでしょうか?